[オーダーメイドの漢方がん治療]

漢方煎じ薬とは

漢方薬は天然薬物を組み合わせて作る

西洋医学も、つい100年程前までは、主として天然物を薬として用いていました。
しかし、再現性と効率を重んじる近代西洋医学では、作用が強く効果が確実な単一な化合物を求める方向で薬の開発が行われてきました。すなわち、活性成分を分離・同定し、構造を決定して化学合成を行ない、さらに化学修飾することによって、活性の強い薬を開発してきました。

一方、漢方では、複数の天然薬を組み合わせることによって、薬効を高める方法を求めてきました。漢方治療の基本は、症状に合わせて複数の薬草(生薬)を選び、それを煎じた(熱水で抽出した)エキス(煎じ薬)を服用することによって病気を治します。

西洋薬のほとんどは単一成分ですが、漢方薬は多くの薬効成分が含まれているのが特徴です。西洋薬のような特効的な効き目は無いのですが、体に優しく作用して、西洋薬にない特徴を持っています。


生薬とは

人類は長い歴史の中で、身の周りの植物・動物・鉱物などの天然産物から、病気を治してくれる数多くの「薬」を見つけ、その知識を伝承し蓄積してきました。このような自然界から採取された「薬」になるものを、利用しやすく保存や運搬にも便利な形に加工したものを生薬(しょうやく)と言います。

たとえば、高麗人参は7月頃に真っ赤な成熟した実をつけるウコギ科の植物です(1)。通常、播種から4〜6年の根を薬用に用います(2)、根を湯通しして乾燥させ(3)、刻んだもの(4)が生薬の人参(ニンジン)です。その成分や品質は日本薬局方で基準が決められおり、その基準に合うものが医療用の生薬として流通しています(5)。
煎じ薬を作成するときは、このような基準を満たす品質の確かな生薬を使用します。

加工によって薬効が変わるものもあります。たとえば、ショウガの根茎は生姜(しょうが)という食品として食べていますが、このショウガを乾燥して細かく刻んだものはショウキョウ(生姜)という生薬になります。同じ漢字でも、食品と生薬では読み方が違ってきます。
ショウガを蒸して加熱して乾燥して細かく刻んだものは
カンキョウ(乾姜)という生薬になります。ショウキョウは健胃作用や吐き気止め作用を利用して漢方薬に使いますが、カンキョウは体を温める効果が高くなります。


煎じ薬とは

煎じ薬とは生薬に含まれる様々な有効成分を熱湯で抽出した内服用の水剤(のみ薬)のことです。生薬に含まれる成分をお湯で煮出すことを「煎じる」といい、刻んだ生薬(キザミ生薬)を煎じて、生薬の成分を煮出したスープ状の液を「煎じ液」といいます。具体的には、土瓶やホーロー鍋などで1日分ごとに分包してある漢方薬を水から火にかけ、煮詰めたのちに煎じかすを取り去った煎じ液を1日に2−3回に分けて空腹時に飲むことになります。本来の漢方薬はこのようにして、キザミ生薬を煮出した煎じ薬として服用します。煎じ薬は面倒だという先入感がありますが、実際に試してみるとそれほど手間はかかりません。一般的な煎じ方を以下に示します。

(1)漢方薬は十数種類の生薬を組み合わせて作ります。生薬の種類や量は患者さんの病状や体質に合わせて決めます。 (2)和紙で作った袋に1日分を入れて漢方薬が処方されます。 (3)漢方薬を煎じる場合には、陶器製やガラス製の容器(土瓶、ほうろう鍋、耐熱性ガラスなど)を使用します。鉄や銅で作られたものは、生薬成分と化学反応を起こして成分が変化してしまうので避けます。 (4)耐熱ガラスポットとタイマーのついた温熱器がセットになったマイコン制御の自動煎じ器も便利です。
(5)和紙に入ったキザミ生薬を出して、600-800ccの水と一緒に火にかけます。和紙に入れたまま煎じ液を作ることもできますが、袋から出した方が十分に煎じることができます。 (6)煎じる時の水の量は生薬の量によって加減します。がんの漢方治療では生薬の量が多くなることがあり、その時は水の量を増やします。通常は生薬の重さの10〜20倍量が目安です。 (7)がんの漢方治療では1日に80グラム以上になることもあります。生薬の量に対して水の量が少なすぎると有効成分を十分に煮出すことができませんが、煎じ液の量が多いと飲むのに大変です。生薬の量に応じて飲める範囲で水の量を増やしたり、1日3回以上に分けて飲むとかの工夫が必要になる場合もあります。 (8)煮え立ちそうになったら火を弱くしてコトコトと煮ます。時間は40〜60分が目安です。水からじっくり煮出すことがポイントです。
煎じ方のまとめ

(9)薬を煎じ終えたら熱いうちにガーゼか茶漉しでカスをこして煎じ薬を別の容器に移します。カスを残しておくと、せっかくの成分がカスに再び吸収されてしまうからです。飲める温度になったところで数回に分けて飲みます。 (10)通常は一日分を2〜3回に分けて、食前か食間に飲みます。
その日の内に飲みきれない時には冷蔵庫に冷やして保存します。2回目、3回目を飲むときは温め治して飲むほうが効果があるようです。

エキス製剤とは

インスタントコーヒーのように、液状のものを粉状にする方法を用いれば、煎じ薬を粉薬にすることが可能です。具体的には、漢方薬を煎じた液を濃縮したあとに、スプレードライ法によって水分を蒸発させてエキス成分を取り出し、乳糖などを加えて粗顆粒状にしたり、カプセルに入れたり錠剤にしたものを多くの製薬会社が大量生産しています。これらを「漢方エキス製剤」といっています。薬を煎じる手間ヒマがかからず携帯に便利という長所があります。
保険が使える医療用漢方製剤として、約150種類のエキス製剤が厚生省から認可されています。その他に、薬局で手軽に手に入る一般用の漢方エキス製剤も多くの種類が販売されています。
以下の写真は医療用に保険で使用されるツムラの漢方エキス製剤です。アルミパックに1回分(2.5gから3g程度)のエキス製剤が入っています。これを水やお湯に溶かして飲むか、あるいは粉末のまま水と一緒に服用します。


「煎じ薬」と「漢方エキス製剤」は何が違うのか。

エキス製剤は品質が安定しており、保管や携帯が手軽にできて使いやすいという利点がありますが、水分を蒸発させて粉末にする過程で精油成分など蒸発しやすい成分を損失してしまう欠点があります。また、処方に含まれる複数の生薬のうち、ある生薬だけを増やしたり減らしたりする、いわゆる「さじ加減」ができないという欠点もエキス製剤にはあります。

煎じ薬は手間がかかることや煎じる時の臭いが問題になることなどの短所があります。生薬は天然の物ですからその産地や天候により品質に差が出るため、使う生薬の品質により漢方薬の効果にも差が出るという問題もあります。したがって、品質の確かな生薬を用いている信頼できる漢方薬局でないと、効くものも効かないということもあります。しかし、品質の確実な生薬を用いれば、エキス剤より効果が高いのが一般的ですし、エキス製剤にない漢方薬を調合できることや、さじ加減が容易に行えてきめの細かい治療ができるなどの利点があります。

煎じる手間ヒマや煎じ薬の持ち運びの点など、現代人のライフスタイルには「漢方エキス製剤」の方が適していると思われるかもしれません。しかし、「効果」という点では煎じ薬の方が勝っているといえます。
抗がん作用をもった生薬を含むエキス製剤はありませんので、がんの漢方治療では、煎じ薬がエキス製剤の何十倍も効果があると言えます。

煎じ薬(湯液)
エキス製剤
長所 ●いわゆる匙加減ができる。
●エキス製剤にない漢方薬を調合できる。
●手間がかからず携帯に便利。
●品質がほぼ一定。
●科学的な薬効評価が可能
●保存・管理が簡単
短所 ●煎じる手間がかかる。
●科学的な薬効評価が困難(品質の不均一性)
●保存・管理に労力がかかる。
●生薬の品質が漢方薬の効果に大きく影響する。
●製剤化の過程で、水分と一緒に精油成分などの有効成分も蒸発してしまう。
●病態に合わせた適切な匙加減ができない。
●2剤を併用するとき共通する成分が重複して過量になる恐れがある。

煎じ薬(湯液)とエキス製剤の長所と短所


漢方治療は民間療法とは違う

「漢方薬を飲んでいます」という人の中には、それがハトムギ茶であったり、ドクダミ茶であることがよくあります。アガリクスなどのキノコやハーブを使った健康食品を漢方薬と思っている人もいます。しかし、これらは「民間薬」あるいは「健康食品」であり、漢方薬ではありません。
民間薬は、下痢止めにゲンノショウコ、便秘にアロエやセンナというように、症状に合わせて飲んだり、健康増進や病気予防の目的で、お茶がわりに飲むのがほとんどです。民間薬は、薬草1種類のみで用い、服用量なども適当で、山野や道ばたに生えているものを採取しても構いません。
最近ブームになっているハーブも、ヨーロッパなどの生活に古くから根づいている民間薬で、料理や健康増進のために利用されています。朝鮮人参やウコンのような漢方で使用する薬草を製品化した健康食品も、厳密な意味では漢方薬とは言えません。

漢方薬は、病気の種類や症状や体質に合わせて、それに合うように複数の薬草を組み合わせて使うというところに、民間薬や健康食品との大きな違いがあります。つまり、オーダーメイドの薬の処方を行うという点が、漢方薬の特徴なのです。
漢方薬に使われる薬草は生薬(しょうやく)と呼ばれ、民間薬と異なり、採取の場所や時期、乾燥の仕方や品質の基準などが厳しく決められています。生薬1種類からなる単味の漢方薬もありますが、ほとんどは数種類から多いときには20種類以上の生薬を調合して作られています。


なぜ生薬を組み合わせるのか

それぞれの生薬には、臨床経験に基づいた効果(薬能)がまとめられています。例えば、桂皮(けいひ)は血液循環を良くして体を温め、寒気を取る効能があります。高麗人参には、消化吸収機能を高めて気力や体力を増す効能が、昔から知られていました。これらの薬能は、人に使った経験からまとめられたものですが、現代における科学的研究によって活性成分や薬理作用も解明されつつあります。
漢方では、複数の天然薬を組み合わせることによって、薬効を高める方法を求めてきました。体質や病気の状態に合わせて複数の生薬が組み合わせて処方されます。これによって複雑な病態や症状に対処でき、また効果をより高め、かつ副作用をより少なくすることができるのです。このように、治療のために複数の生薬を配合したものを漢方薬あるいは漢方方剤といいます。

例えば、滋養強壮薬(補剤)の代表である
四君子湯(しくんしとう)人参(にんじん)・白朮(びゃくじゅつ)・茯苓(ぶくりょう)・甘草(かんぞう)・大棗(たいそう)・生姜(しょうきょう)の6つの生薬からなります。
人参・白朮・茯苓・甘草の4つの生薬には、消化吸収機能を高め気の産生を増す作用、免疫力を増す作用があります。この4種類の生薬は穏やかに作用して優れた効能を持つので君子のようであるという意味で四君子湯の名前がついてます。
甘草は甘味料として食品にも使われており、味を整えたり複数の生薬全体を調和させる作用もあります。大棗・生姜も消化器系の働きを調整する効果を持っています。
人参・甘草は体内の水分を保持する作用があり、一方、白朮・茯苓は体内の水分を排出する作用(利水作用)があります。生姜は体を乾燥させる傾向(燥性)を持ち、大棗は逆に潤いを持たせます(潤性)。人参を使い過ぎると体がむくんだり血圧が上昇したりしますが、四君子湯のように「利水」の作用を持つ生薬と組み合わせて用いることにより、人参の副作用を回避することができます。
すなわち、体力や免疫力や消化管機能を高める目的で、薬用人参や茯苓などを使うときには、それぞれ単独で用いるより組み合わせて用いるほうが、副作用もなく効果を高めることができるのです。



四君子湯(人参・白朮・茯苓・甘草・大棗・生姜)は気力の低下と胃腸のアトニー症状(緊張低下)を改善する効果がある。副作用を抑えながら、その効果を最大に高めるために6つの生薬の組み合わせが長い歴史の中で見い出された。


漢方薬は抗がん力を高める成分の宝庫

がん治療に使用する漢方薬は、100種類以上ある生薬から、6〜20種類程度の生薬を選んで作製します。生薬の組み合わせは、患者の体質や病状、治療の状況に応じてオーダーメイドに決定します体力や免疫力を高めると同時に、自覚症状を改善し、がん細胞の増殖を抑えることによって、生活の質(QOL)を良くし、延命することを目標にします。抗がん力を高め、がん細胞の増殖を抑える生薬が多数用意されています。

1.胃腸の調子を整えて元気をつける補気・健脾薬
 
人参・黄耆・白朮・蒼朮・山薬・甘草・大棗・茯苓など
6.体の水分の分布と代謝を良くする利水薬
 
猪苓・沢瀉・防己・黄耆・蒼朮・白朮・茯苓など
2.栄養を改善して抵抗力を高める補血薬
 
当帰・芍薬・地黄・何首烏・阿膠・枸杞子・竜眼肉など
7.体を温めて新陳代謝を高める補陽薬
 附子・桂皮・乾姜・杜仲・蛇床子・山椒など
3.体の潤いを増す滋陰薬
 麦門冬・天門冬・山茱萸・五味子・地黄・玄参など
8.生命力を高める補腎薬
 地黄・山薬・山茱萸・莵絲子・枸杞子・杜仲など
4.体の機能の停滞を改善する理気薬
 陳皮・枳実・香附子・木香・蘇葉・薄荷・柴胡など
9.炎症を抑えたり解毒機能を補助する清熱解毒薬
 黄連・黄ごん・黄柏・山梔子・夏枯草・連翹など
5.組織の血液循環を良くする駆お血薬
 桃仁・牡丹皮・芍薬・紅花・牛膝・莪朮・丹参など
10.がん細胞の増殖や転移を抑える抗がん生薬
 半枝蓮・白花蛇舌草・山豆根・蒲公英・霊芝・竜葵など

生薬や薬草は天然の薬です。抗がん力を高める成分の宝庫であり、これらの成分を利用することによって、体力や免疫力を高め、がん細胞の増殖を抑えることができます。

滋養強壮薬の宝庫
 高麗人参・黄耆・霊芝など
栄養、体力、免疫力の増強
抗酸化物質の宝庫
 フラボノイド・カテキン・リグナンなど
抗酸化力の増強
血液浄化、血行改善物質の宝庫
 駆お血薬・清熱解毒薬など
解毒力・新陳代謝・治癒力の増強
抗炎症作用
抗腫瘍物質の宝庫
 アルカロイド・トリテルペンなど
がん細胞の増殖・転移の抑制、
がん細胞のアポトーシス誘導

銀座東京クリニックの『新しい漢方がん治療』の考え方

【がんの漢方治療には多様な考え方がある】

漢方がん治療」というのは、「漢方薬を用いたがん治療」のことです。「漢方がん治療」という言葉がある訳ではありませんが、私が2001年にがんの漢方治療に関する一般向けの書籍を主婦の友社から出版したとき、そのタイトルを『からだにやさしい漢方がん治療』としました。それ以来、私は「漢方薬を用いたがん治療」を「漢方がん治療」と言っています。

漢方がん治療の主な目的は、1)抗がん剤や放射線や手術など標準治療の補完(副作用軽減、合併症の予防、回復促進、抗腫瘍効果の増強)、2)末期がん患者の症状緩和や延命を目的とした代替医療、3)がん治療後の再発予防の3つです。

「抗がん作用のある漢方薬」あるいは「がん治療に役立つ漢方薬」を私は「抗がん漢方薬」と呼んでいます。抗がん漢方薬は、食欲や体力や免疫力を高める生薬や、抗がん作用のある生薬などを組み合わせて作ります。体の治癒力や回復力を高めるためには、胃腸の状態や血液循環や新陳代謝を良くする必要があります。冷えがある場合は、冷えを改善することが治癒力を高めることになります。抗炎症作用や抗がん作用をもつ成分は、がん細胞の増殖や悪性化の抑制に役立ちます。このような目的のために、複数の薬草(生薬)を組み合わせて作成した「漢方薬」を用いるのです。症状や治療の状況に応じたオーダーメイド(テーラーメイド)の漢方処方は、中医学の「弁証論治」を基本にしながら、生薬成分の薬効に関する科学的知識の活用も大切です。その意味では、「傷寒論」などの中医学や漢方の古典の記述に固執する必要は無いと考えています。
中国医学では4000年以上の歴史の中で、薬草の薬効や利用法を経験的に見つけ、その知識が蓄積されてきました。複数の生薬を組み合わせることによって薬効を高め、あるいは新たな薬効を作り出し、さらに副作用を軽減するノウハウを蓄積し、有名な処方が伝えられてきました。
例えば、体力を高める目的では、単に高麗人参や黄耆や甘草などをそれぞれ単独で用いるより、それらを組み合わせた処方(例えば補中益気湯や十全大補湯など)が相乗効果によって体力増強効果を高めることができます。また、気や血や水(津液)を補う補法を行うときは、それらの巡りが悪いとき(気滞、お血水滞)は、その程度に応じて巡りを良くする生薬(理気薬、駆お血薬利水薬)を併用することが大切であり、巡りを良くすることによって補剤の効き目は良くなります。気・血・水の巡りが悪いときに、気・血・水の量を増やすだけの漢方処方を服用すると病状や症状を悪化させることもあります。(体を元気にするつもりががんを元気にしてしまう場合もあります。)
抗がん剤治療による副作用(食欲や体力や免疫力の低下)を軽減するためには、胃腸粘膜や骨髄やリンパ組織のダメージの回復を促進する必要があります。そのためには、元気を高める生薬、造血機能を高める生薬、血液循環や新陳代謝を良くしてダメージを受けた組織の修復を促進する生薬など、薬効の異なる複数の生薬を組み合わせることが必要です。
漢方治療が他の健康食品と異なるのは、このような薬効を高めるノウハウを4000年に及ぶ臨床経験の中で蓄積してきた点にあります。

ただ、中医学や漢方医学におけるがん治療の考え方には、いくつもの「流派」のようなものもあります。西洋医学でも、「抗がん剤治療は受けてはいけない」という意見や、「低用量の抗がん剤治療」を推奨する意見など、異なる考え方があるのと同じです。免疫療法でも、「抗がん剤治療が免疫力を低下させるので免疫療法と抗がん剤治療の併用はできない」という意見がある一方、「抗がん剤治療で低下する免疫力を補うために免疫療法を併用する」という意見もあります。
がん以外の病気の漢方治療でも、流派によって処方が全く異なります。病気の原因を攻撃する「瀉法」を主体にする流派や、体の治癒力や抵抗力を高める「補法」を重視する流派もあります。
がんの漢方治療でも、血液浄化や血液循環を良くする作用をもつ「駆お血薬(活血化お薬)」や、抗炎症作用や抗がん作用をもつ「清熱解毒薬」を重視する考え方がある一方、がんは「寒毒」であり、冷え(陽虚)の改善が重要だと考える流派では、冷やす作用(解熱作用)がある清熱解毒薬を使用してはいけないと考えています。
この違いは、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)に対する考え方の違いと似ています。シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)ががんの発生や進展に関与しているため、COX-2阻害剤(celecoxibなど)ががんの予防や治療に役立つという報告が多数あります。COX-1とCOX-2を阻害するアスピリンを常用している人は大腸がんや乳がんの発生率が低下するという疫学データがあります。したがって、がん予防の研究領域では、NSAIDはがんの予防や治療に有用な薬と一般的に考えられています。しかし一方、非ステロイド性抗炎症剤は解熱作用があって体を冷やして治癒力を低下させるので、がん患者には禁忌だという意見も根強くあります。「体を温めればがんが治る」という考えを重視しているグループでは非ステロイド性抗炎症剤の使用に反対しています。NSAIDが体の治癒力を低下させるという考え方の科学的根拠はそれほど高いものでは無いのですが。それを否定する根拠もありません。
ただ、私の考えとしては、がんの発生や悪性進展と慢性炎症との関連は密接であり、全身的には冷え(寒毒)が治癒力を低下させてがんの発生や進展を促進する作用を持ちますが、がん組織自体は慢性炎症状態であり、熱をもっていると考えています。
したがって、清熱解毒薬に含まれる抗炎症作用や抗がん作用のある成分はがん治療において有用(必要)だと思います。もし冷え(陽虚)が問題になるようだと、冷えを改善する補陽薬(附子、桂皮、乾姜、呉茱萸など)や体を温める駆お血薬(当帰、川きゅう、延胡索、莪朮など)を多く併用すれば済むと思います。つまり、折衷案です。がんの漢方治療においては、漢方的な考え方だけでなく、西洋医学の知識も取り入れながら、フレキシブルに処方を考えるのが良いと思います。

【抗がん作用を強めるためには生薬だけに固執しない方法も必要】
臨床経験に基づいた生薬や漢方処方の知識は、昔から使われてきた生薬に限定されることになります。漢方薬の処方内容は、中国で4000年以上の歴史の中で発展してきたため、使用される生薬も中国で古くから使用されているものに限られます。つまり、「漢方がん治療」も基本的には、古くから使用されてきた生薬を使った漢方薬が主体になります。中国では、何千という生薬が使われていますが、日本では、そのうち代表的な数百のものが主に用いられています。
しかし、古くから使用されてきた生薬だけを用いた漢方薬の処方では、進歩が無いと言わざるを得ません。西洋医学や標準治療が日々進歩していることを考えると、昔ながらの理論や経験や古くからある生薬だけに固執していると古くさい医学になってしまいます。漢方がん治療も進歩する必要があります。
例えば、中国医学以外の伝統医学や民間療法で使用されている薬草の中には、薬効の優れたものもあります。そのような薬草やハーブを漢方薬の処方に加えてみることは有用です。そのような薬草やハーブとして、私が実際に利用しているものに次のようなものがあります。
アーユルヴェーダ医学で滋養強壮作用と抗がん作用が知られている「アシュワガンダ」、肝細胞を保護し肝障害を軽減するハーブとしてヨーロッパで使われている「ミルクシスル」、抗がん作用のあるキサントンを含む「マンゴスチン果皮」、抗がん作用のあるコルジセピンを多量に含む「サナギタケ」などです。
最近は薬草やハーブから活性成分を抽出して比較的安価に販売されています。例えば、赤ぶどうの皮や赤ワインに多く含まれるレスベラトロールの抗がん作用や寿命延長作用などが報告されています。
赤ワインに多く含まれているといっても、赤ワイン1リットル当たり数mgで、薬効を期待できる1日数百mgから数グラムを摂取することは不可能です。しかし、98%以上の純度で抽出精製されたレスベレラトロールが、1グラム当たり数十円(1kg数万円程度)でサプリメントの原料として販売されています。このような抽出されたレスベラトロールを使って1日数100mgを摂取すると、レスベラトロールの抗がん作用や寿命延長効果が期待できます。
ただし、レスベラトロールだけを服用しても、あまり効果が期待できないという報告があります。その理由は、腸管からの吸収が悪いことや、血中に吸収されても、肝臓などで代謝(糖が付いて不活性化される)されてしまうからです。しかし、レスベラトロールと他のフラボノイド(ケルセチン)やカテキンとの併用だと、レスベラトロールが低濃度でも、これらの相乗効果で強い抗がん作用を示すことが報告されています。したがって、フラボノイドやカテキンが豊富な漢方薬に、抽出したレスベラトロールを加えてみる価値はありそうです。
このレスベラトロールは水に極めて溶けにくいのですが、これを溶けやすくする方法として、ガンマシクロデキストリンがあります。ガンマシクロデキストリンで包接すると、レスベラトロールの溶解度と腸管からの吸収効率を高めることができます。また、他の生薬成分の中にはサポニンなど水に不溶性の成分を溶かしやすくする成分も豊富に含まれています。したがって、レスベラトロールのように抽出した成分で、水に溶けにくいものでも、ガンマシクロデキストリンや他の生薬成分(サポニン)などを利用すれば、生体利用率(バイオアベイラビリティ:bioavailability)を高めることができ、さらに、他のフラボノイドやカテキンやアルカロイドやトリテルペノイドなどの薬効成分との相乗効果で、強い抗がん作用を得ることができるのです。
生薬やハーブから、がん治療に有用な成分が見つかっています。たとえば、牛蒡子や花椒に含まれる抗がん成分のバイオアベイラビリティを高める目的でもガンマシクロデキストリンを利用すると抗がん作用を強化することができます。がんの漢方治療に使う生薬の量は多くなりがちですが、生薬の量が多くなれば水の量も増やす必要があり、煎じ薬の量が多くなって飲むのが大変です。抽出効率を高めて、煎じる生薬の量を減らす工夫(生薬を粉砕する、抽出成分を利用など)も必要かもしれません。

このような観点から、銀座東京クリニックでは、通常の生薬以外に、海外の薬草やハーブや抽出した成分を積極的に加えた「抗がん漢方薬」を作成して治療に使っています。このような工夫をすることによって、実際に効果が高まることを確認しています。このような抗がん作用を高めた適切な漢方治療を行えば、治療後の再発をほとんど完全に抑えることが可能で、また進行がんにたいしてもかなりの延命効果を得ることができます。


漢方煎じ薬のパック詰めとは
  1. 漢方薬を大型の釜で煎じて、煎じ薬をアルミニウム・パックに詰めます。

  2. 高温の状態でパック詰めして密閉するので、長期間(30日間以上)室温で保存しても、腐ったり品質が劣化することはありません。(冷蔵保存すれば数カ月の保存も可能です)

  3. 一度に煎じるので、品質のムラがありません。


がんに効く漢方薬は煎じ薬が一番です
しかし、漢方薬を煎じるのは手間がかかり、特に入院中は煎じ薬を服用することは困難な場合が多いのが欠点です。この欠点を解決するのが「煎じ薬のレトルトパック詰め」です。

患者さんの病状や治療の状況に応じてオーダーメイドで作成したレトルトパック詰めの抗がん漢方薬は、入院中だけでなく、在宅でのがん治療にも有用です。

漢方がん治療で実績のある福田医師が処方するオーダーメイドの抗がん漢方薬をレトルトパック詰めして提供しています。

煎じ薬のパック詰めをご希望の方は、メールフォーム又は、メールinfo@1ginzaclinic.com で病状や治療の状況を記載してご相談下さい。
(費用は病状や目的によって異なりますが、通常は1ヶ月分が3〜6万円です)

(抗がん漢方薬を用いたがん治療のサポートについてはこちらで解説しています)


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