植物毒はがん細胞の増殖を抑える

【植物毒が抗がん剤に使用されている】

 多くの植物は、カビや細菌や昆虫などの外敵から自分を守るため、あるいは動物から食べられないようにするために毒を持っています。このような植物毒の中には、がん細胞の増殖を阻害するものがあり、世界中で植物から抗がん物質を見つけ出す研究が行なわれています。現在使用されている抗がん剤の中にも、植物から見つかったものがあります。

 例えば、抗がん剤の分類の中に「植物アルカロイド」と言われるものがあります。アルカロイド(alkaloid)という言葉は「アルカリ様」という意味ですが、窒素原子を含み強い塩基性(アルカリ性)を示す有機化合物の総称です。植物内でアミノ酸を原料に作られ、植物毒として存在しますが、強い生物活性を持つものが多く、医薬品の原料としても利用されている成分です。

 抗がん剤として使用されている植物アルカロイドとして、キョウチクトウ科ニチニチソウに含まれるビンクリスチンビンブラスチン、イチイ科植物由来のパクリタキセルなどがあります。塩酸イリノテカンは中国の喜樹という植物から見つかったカンプトテシンという植物アルカロイドをもとに改良された誘導体です。

 このように、植物毒と言われる成分の中には抗がん剤として利用できるものがあることから、漢方薬に使用される生薬の中にも抗がん作用のある成分があっても不思議ではありません。
漢方治療は体力や抵抗力を高める方法だけでなく、西洋医学のがん治療と同じように、漢方でも「毒をもって毒を攻撃する(以毒攻毒法)」という考え方も重視しています。

 中国では抗がん作用を持つ生薬の確認とその臨床的試用が発表されています。従来の伝統的な中薬学の分類綱目のほかに、新たに「抗がん薬」という綱目が付加され、抗がん薬草を解悦する本も出版されています。

(図)植物に含まれるアルカロイドなどの成分の中には、細胞の働きを阻害したり、様々な生理活性を持ったものが数多く存在します。これらの成分は毒薬にもなりますが、上手に利用すると医薬品にもなります。西洋医学では、分離した成分を医薬品として利用していますが、漢方治療では毒を持った植物そのものを利用しています。がんの漢方治療では、このような植物毒を、がん細胞を殺したり増殖を抑える目的で利用しています。

【抗がん活性のある生薬】

 動物実験や臨床経験などで抗腫瘍効果が知られている抗がん生薬として、白花蛇舌草・半枝蓮・竜葵・七叶一枝花・夏枯草・蒲公英・山豆根・紫根・よく苡仁などがあります。

 固形がんの場合、白花蛇舌草と半枝蓮の組み合わせの有効例が多く報告されています。白花蛇舌草(びゃっかじゃぜつそう)は肝臓の解毒作用を高めて血液循環を促進し、白血球・マクロファージなどの食細胞の機能を著しく高め、リンパ球の数や働きを増して免疫力を高めます。半枝蓮 (はんしれん)はアルカロイド・フラボノイド配糖体・フェノール類・タンニンなどを含み、抗炎症・抗菌・止血・解熱などの効果があって、中国の民間療法として外傷・化膿性疾患・各種感染症などに使用されています。この2つは、各種の腫瘍に広く使用され、特に消化管の腫瘍(胃がんや大腸がんなど)に対しては比較的よい治療効果が報告されています。

 莪朮(がじゅつ)・三稜(さんりょう)は強い駆お血の効能を持ち、血腫や凝血塊などを溶解・吸収して除き、抗がん生薬や免疫賦活性生薬の効果を高める目的で使用されます。夏枯草(かごそう)や牡蛎(ぼれい)はしこりを軟化させる薬として用いられます。  

 このような抗がん生薬の多くは感染症や炎症の治療にも用いられており、「清熱解毒薬」と言われることもあります。「清熱解毒」という薬効を西洋医学的に解釈すると、抗炎症作用(清熱作用)体に害になるものを除去する作用(解毒作用)に相当します。体に害になるものとして、活性酸素やフリーラジカル、細菌やウイルスなどの病原体、環境中の発がん物質などが考えられます。つまり、「清熱解毒薬」には、抗炎症作用、抗酸化作用、フリーラジカル消去作用、抗菌・抗ウイルス作用、解毒酵素活性化作用、抗がん作用などがあり、がんの予防や治療に有用であることが理解できます。

 免疫力を増強させて抗腫瘍効果を発揮するものとして常用される人参(にんじん)・黄耆(おうぎ)・茯苓(ぶくりょう)などの補気薬の他に冬虫夏草(とうちゅうかそう)・霊芝(れいし)などが用いられます。一般に、駆お血作用のある生薬には抗炎症作用やラジカル消去活性を有するものが多く、桃仁(とうにん)・紅花(こうか)・丹参(たんじん)などには発がん抑制効果も報告されています。理気薬として使用される蘇葉(そよう)・薄荷(はっか)などのシソ科の植物には、その精油成分中のモノテルペン類に強い発がん抑制効果と抗腫瘍効果が報告されています。シソ油にはがん予防効果のあるオメガ3系列の脂肪酸であるα-リノレン酸が豊富であることが知られており、その点でもシソ科の生薬(蘇葉・薄荷・丹参・黄ごん・夏枯草・半枝蓮など)は有用と思われます。

 このような作用機序の異なる生薬を組み合わせることによって抗がん作用を高めることができます。

【がんとの共存に役立つ抗がん生薬】

 抗がん剤の有効性の判断は、何よりも腫瘍サイズの縮小(奏功率)であり、それも50%以下にならないと有効と判定されません。QOL(生活の質)がいかに改善され、何か月にもわたって腫瘍サイズが不変のような薬剤があったとしても、現行の基準では無効と評価され、治療薬になる可能性はゼロです。

 抗がん剤開発の過程では、生薬を始め多くの薬草の抗がん活性がスクリーニングされてきました。しかし生薬の抗がん作用のスクリーニングの過程ではがん縮小効果の強いことが選択の基準とされてきたため、がん縮小率は低くても延命効果という面から有用な生薬の多くが見逃されてきました。

 抗がん生薬の多くは、腫瘍縮小率から評価すると、化学薬品の抗がん剤の効果に及ばないのですが、副作用が少なくしかも腫瘍の増殖を有意に抑制できるようなものは腫瘍の退縮につながります。腫瘍縮小率が0であっても、がん細胞を休眠状態にもっていけるものであれば延命効果は期待できます。このような薬剤は、従来の抗がん剤の評価法では無効と評価されるものですが、がんとの共存を目指す治療においては極めて有用と考えられます。

 生薬には、毒性を示すアルカロイドだけでなく、抗酸化作用や免疫増強作用を有するフラボノイドやサポニンや多糖類など抗腫瘍効果を有する成分が多く含まれています。このような生薬を活用することによって、がん細胞の増殖を抑制し休眠状態に誘導することも不可能ではありません。


【代表的な抗がん生薬の効能や基礎研究の例】

白花蛇舌草(ビャッカジャゼツソウ)
半枝蓮(ハンシレン)
竜葵
七叶一枝花
喜樹
夏枯草(カゴソウ)


白花蛇舌草(びゃっかじゃぜつそう)Oldenlandia diffusa:

本州から沖縄、朝鮮半島、中国、熱帯アジアに分布するアカネ科の1年草のフタバムグラの根を含む全草を乾燥したもの。田畑に生える雑草で、二枚の葉が対になっているためフタバムグラの名がある。

肝臓の解毒作用を高めて血液循環を促進し、白血球・マクロファージなどの食細胞の機能を著しく高め、リンパ球の数や働きを増して免疫力を高める。各種の腫瘍に広範に使用され、特に消化管の腫瘍(胃ガンや大腸ガンなど)に対しては比較的よい治療効果が報告されている。

脂肪肝やウイルス性肝炎やアルコール性肝炎などの各種肝障害で傷ついた肝細胞を修復する効果があり、さらに抗菌作用や抗炎症作用があるため、扁桃腺炎・気管支炎・咽喉炎・虫垂炎などの感染性疾患にも有効。

飲み易く刺激性が少ないので、中国では白花蛇舌草の含まれたお茶や煎じ薬はガン予防薬として人気を呼んでいる。

【白花蛇舌草と半枝蓮の組み合わせが各種のガンの治療に使われている】

台湾や中国では古くから消炎、排膿、解毒、殺菌作用、ヘビによる咬傷を治すなどの効能で、白花蛇舌草と半枝蓮が民間薬として使用されている。さらに、胃癌、大腸癌、肝癌などの消化器系癌や肺癌・子宮癌・乳癌に対する効果も指摘されて広く使用されている。日本においても入手しやすく、抗ガン剤の補助療法や進行ガンの治療などに試みられることも多くなっている。

両者は通常、併用されることが多く、進行ガンの治療では、白花蛇舌草は20〜60g、半枝蓮は10〜30g程度を1日量の目安として煎じ薬として使用される。どの程度の量が適当かはあまり根拠はないが、例えば、ある民間療法の処方では白花蛇舌草と半枝蓮は2:1で使用されていて、白花蛇舌草65gと半枝蓮32.5gを1日量として400 mlのお湯で煎じて飲用するという方法がある。

進行ガンや化膿性疾患など重症の場合には、1日20〜60グラムという大量が必要だが、ガン治療後の再発予防にはその3分の1程度を飲用すればそれなりの効果は期待できる。再発の危険が高いとかすでに転移がある場合には量を増やすと効果を高めることができる。

進行ガンに使う量の1/3程度の白花蛇舌草(6〜12グラム/日)と半枝蓮(3〜6グラム/日)を煎じてハーブティーとして毎日少しずつ飲用すると、ガンに対する免疫力を高めてガン再発を予防する効果が期待できます。

いずれも漢方専門薬局で入手できる。

【白花蛇舌草と半枝蓮の抗腫瘍効果の研究】

白花蛇舌草と半枝蓮は中国の民間薬であり、ガンに対する有効性は経験的なものであるが、この2つの生薬の抗ガン活性に関する科学的な研究が、日本や欧米の医学雑誌などにも掲載されるようになった。

2000年の和漢医薬学雑誌には「半枝蓮と白花蛇舌草の癌細胞増殖抑制効果と自然発症肝腫瘍マウスの延命効果」(和漢医薬学雑誌、17:165-169,2000)という題の論文が掲載されている。この研究では白花蛇舌草65gと半枝蓮32.5gを400 mlの熱水で抽出した液を作成し、肝臓癌を自然発症するマウスに自由摂取にて投与して、生存期間をコントロール群(薬を飲まなかったグループ)と比較検討している。肝臓癌が発病すると寿命が短くなり、コントロール群の平均生存期間は55週齢であったのに対して、投与群では76週齢であった。約1.4倍に生存期間を延ばしたことになるが、投与群にも最終的には全例に肝臓癌の発生しているため、ガン発生を防止するというより、ガン細胞の増殖速度を抑えることによりガン化の進展を抑える可能性が示唆されている。また培養ガン細胞を用いた実験で、ヒトの乳ガン細胞や前立腺ガン細胞の増殖を抑える効果も報告している。長期間の投与でも有害作用は認められていないため、ガン再発のリスクが高い場合の予防的な投与や、ガン発見当初より服用する価値があることも示唆している。

米国カリフォルニアのロマリンダ大学医学部の細菌学のWong博士らは、半枝蓮と白花蛇舌草を投与すると、マウスに移植した腎臓癌細胞(Renca細胞)の増殖が抑制され、その作用メカニズムとしてマクロファージが活性化して腫瘍の増殖を抑制することを報告している。また、Wong博士らは、半枝蓮と白花蛇舌草には発ガン物質の活性化(変異原性)を抑える可能性も報告している。

【文献的考察】

Oldenlandia diffusa and Scutellaria barbata augment macrophage oxidative burst and inhibit tumor growth. (Wong BY, Lau BH, Jia TY, Wan CP.)
Cancer Biother Radiopharm 1996;11(1):51-56
米国カリフォルニアのロマリンダ大学医学部の細菌学のWongらの報告。
半枝蓮と白花蛇舌草を投与すると、マウスに移植した腎臓癌細胞(Renca細胞)の増殖が抑制された。その作用メカニズムとしてマクロファージを活性化して腫瘍の増殖を抑制することを報告している。
(注)それぞれの薬草の量は1日4mgで検討されており、体重換算で人では1日8−10g程度に相当する。マウスは人よりも代謝が早いので、体重あたりで換算するとマウスの方がより大量の薬が必要な事が多い。したがって、人で1日10g程度でも十分に効果が期待できると推測される。

Immunomodulating activity of Chinese medicinal herbs and Oldenlandia diffusa in particular. (Yoshida Y, Wang MQ, Liu JN, Shan BE, Yamashita U.)
Int J Immunopharmacol 1997;19(7):359-370
黄耆(Astragalus membranaceus)と白花蛇舌草(Oldenlandia diffusa)はマクロファージを活性化して、IL-6や腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor)の分泌を促進する。(in vitroの研究)

一覧へ


半枝蓮(はんしれん)Scutellaria barbata:

【概略】

シソ科のScutellaria barbataの全草を乾燥させたもの。中国各地や台湾などに分布し、コガネバナ(生薬名:黄ゴン)やタツナミソウと近縁のシソ科植物。

アルカロイド・フラボノイド配糖体・フェノール類・タンニンなどを含み、抗炎症・抗菌・止血・解熱などの効果があって、中国の民間療法として外傷・化膿性疾患・各種感染症などに使用されている。肺癌や胃癌など種々のガンに対してある程度の効果があることが報告されている。

【白花蛇舌草と半枝蓮の組み合わせが各種のガンの治療に使われている】

台湾や中国では古くから消炎、排膿、解毒、殺菌作用、ヘビによる咬傷を治すなどの効能で、白花蛇舌草と半枝蓮が民間薬として使用されている。さらに、胃癌、大腸癌、肝癌などの消化器系癌や肺癌・子宮癌・乳癌に対する効果も指摘されて広く使用されている。日本においても入手しやすく、抗ガン剤の補助療法や進行ガンの治療などに試みられることも多くなっている。

両者は通常、併用されることが多く、進行ガンの治療では、白花蛇舌草は20〜60g、半枝蓮は10〜30g程度を1日量の目安として煎じ薬として使用されている。例えば、ある民間療法の処方では白花蛇舌草と半枝蓮は2:1で使用されていて、白花蛇舌草65gと半枝蓮32.5gを1日量として400 mlのお湯で煎じて飲用するという方法がある。

進行ガンや化膿性疾患など重症の場合には、1日20〜60グラムという大量が必要であるが、ガン治療後の再発予防にはその3分の1程度を飲用すればそれなりの効果は期待できる。再発の危険が高いとかすでに転移がある場合には量を増やすと効果を高めることができる。

一覧へ


竜葵(りゅうき) Solanum nigrum L.

 【起源】
ナス科のイヌホオズキの乾燥した全草。温帯から熱帯にかけて広く分布し、農地や道端に自生する。高さ20〜90センチメートルの一年草で、茎は枝分かれして広がる。球形の液果は、5〜6粒が房になっていて、未熟なうちは緑色、熟すと黒くなる。薬用部位は全草。

 【薬理作用】
・抗菌・抗炎症作用(清熱解毒、消腫)
・抗がん

 【一般の用法と用量】
煎液には15g〜30g。

 【がん治療における科学的研究】
Solanine, Solasonine, Solamargineなどのアルカロイドを含み、これらのアルカロイドががん細胞に細胞死(アポトーシス)を引き起こすことが培養細胞の実験で報告されている。強い清熱解毒の効果を持ち、臨床的にも多くのがんの治療に使用されている。

一覧へ


七叶一枝葉(しちよういっしか)Paris polyphylla

 【起源】
中国各地に分布しているユリ科の多年草。
高さ30〜100cm、直径約1cmの直立の茎の上端に、通常7片の長楕円形の葉が輪生する。七葉一枝花とも書く。
薬用部位の根茎は古く「蚤休(そうきゅう)」と呼び「神農本草経」や「本草綱目」などにも記載されている。「草河車(そうかしゃ)」とも言う。

 【薬理作用】
・抗菌・抗炎症作用(清熱解毒、消腫)
様々な細菌やウイルスに対して強い抗菌・抗ウイルス作用を発揮する。
炎症を抑え、腫れを軽減する。
・鎮咳・去痰作用、喘息を緩和する作用
・鎮静作用・抗痙攣作用
・ 抗がん作用

以上の薬効により、肺炎、気管支炎、喘息、脳炎、腫れもの、蛇咬傷、小児の熱性痙攣などに利用される。

 【一般の用法と用量】
煎液には3g〜15g。
がん治療には15〜30gを使用
毒性もあり、過量に服用すれば悪心、嘔吐、頭痛がみられ、ひどければ痙攣が現れる。

 【がん治療における科学的研究】
・主成分のステロイド様サポニンのポリフィリンD(Polyphyllin D)には、様々ながん細胞に対してアポトーシスを誘導する効果が報告されている。

・肺がん、乳がん、消化器系のがん、肝臓がん、膵臓がん、膀胱がん、脳腫瘍、白血病など多くの悪性腫瘍に対して効果が報告されている。

・がん治療で使用される15種類の生薬について、消化器系のヒト培養がん細胞(胃がん、大腸がん、肝臓がん、食道がん)を用いて、抗腫瘍活性を検討したところ、七叶一枝花の抽出エキスが最も効果が高く、培養がん細胞の増殖を半分に抑制する濃度は10〜30 マイクログラム/mlであった。
(Phytother Res. 2007 Jul 18; [Epub ahead of print])

・七叶一枝花の根に含まれるディオスゲニル・サポニン(diosgenyl saponin)類にはマクロファージを活性化し、免疫増強作用がある。
Bioorg. Med. Chem. Lett. 17(9):2408-2413, 2007

・中国では七叶一枝花は肝臓がんの治療に使用されている。七叶一枝花の根に含まれるPolyphyllin Dは、培養肝臓がん細胞のアポトーシスを誘導した。
また、抗がん剤感受性を高める効果もある。
Cancer Lett. 217: 203-211, 2005

・七叶一枝花の根に含まれるPolyphyllin Dは乳がん細胞に対して細胞死(アポトーシス)を誘導する効果がある。乳がん培養細胞を使った実験では、5μMの濃度で48時間処理するとがん細胞の半分がアポトーシスで死んだ。
Cancer Biol Ther 4(11): 1248-1254, 2005

一覧へ


喜樹(きじゅ)Camptotheca acuminata

 【起源】
ヌマミズキ科カンレンボク(旱蓮木)。中国原産の落緑高木で樹高30mにも達する。中国では道ばたや庭園に多く栽培されている。木材は家具の製造や製紙の原料にも使用されている。
薬用部位は果実と根。漢方薬には通常、果実を使用する。果実は秋から初冬に採取して天日で乾燥する。

 【薬理作用】
抗がん作用:
薬用部位である果実や根をはじめ植物全体にカンプトテシン(camptothecine) という抗癌作用のある物質が含まれている。カンプトテシンはトポイソメラーゼを阻害することによて細胞分裂中のDNAを切断し、がん細胞が分裂増殖するのを阻害する。
慢性リンパ性白血病や慢性骨髄性白血病に効果が高い。胃がん、大腸がん、肝臓がん、肺がん、膀胱がんなどにも有効。

カンプトテシンは果実に最も多く含まれる。果実にはcamptothecine以外にも、Hydorxycamptothecine, Deoxycamptothecineなどの抗がん成分が含まれている。
カンプトテシンを基にしてイリノテカン(CPT-11)という抗がん剤が開発された。

 【用量】
果実の場合、煎じ薬には1日量3〜9グラムを使用。

一覧へ


夏枯草(かごそう)Prunella vulgaris L.:

【基原】ウツボグサ(シソ科)の花穂

【薬能・薬理作用】

・漢方で利尿消炎薬として腎臓炎、膀胱炎に効果があり、また化膿性皮膚疾患、眼病等の治療薬として用いられる。

・消痰散結の効能を利用して、各種腫瘍性疾患に応用できる。皮下結節・リンパ節腫・甲状腺腫などに、長期間使用すると有効。一般に玄参・牡蛎・貝母などと用いる。

・胃腸虚弱者には慎重に用いる。長期間服用する場合には、人参・白朮などを配合して脾胃を保護する必要がある。

[常用量/日]9ー15 g

【文献的考察】

夏枯草には高濃度のロズマリン酸が含まれている。ロズマリン酸は抗酸化作用が強く抗炎症、抗アレルギー作用などもある。
(一般的にシソ科ハーブには高濃度のロズマリン酸が含まれている。)

[Medicinal Lamiaceae with antioxidant properties, a potential source of rosmarinic acid].[フランス語](Lamaison JL, Petitjean-Freytet C, Carnat A.)Pharm Acta Helv 1991;66(7):185-188

夏枯草の抗酸化力はロズマリン酸の含量と関連する。夏枯草には乾燥重量で6.1%のロズマリン酸が含まれている。

抗酸化作用、フリーラジカル消去活性がある。

Antioxidative and free radical scavenging activities of selected medicinal herbs.(Liu F, Ng TB.)Life Sci 2000 Jan 14;66(8):725-735

12種類の生薬をスクリーニングして、黄連(Coptis chinensis), 牡丹皮(Paeonia suffruticosa), 夏枯草( Prunella vulgaris) Senecio scandensに強い抗酸化作用・フリーラジカル消去活性を認めた。

トリテルペン類には抗炎症作用がある。

Anti-allergic and anti-inflammatory triterpenes from the herb of Prunella vulgaris.(Ryu SY, Oak MH, Yoon SK, Cho DI, Yoo GS, Kim TS, Kim KM.)Planta Med 2000 May;66(4):358-360

夏枯草の抗炎症作用の活性成分としてトリテルペン類のbetulinic acid, ursolic acid, 2 alpha,3 alpha-dihydroxyurs-12-en-28-oic acid, 2 alpha-hydroxyursolic acidを同定した。

エイズウイルスの増殖抑制効果がある。

Extract of Prunella vulgaris spikes inhibits HIV replication at reverse transcription in vitro and can be absorbed from intestine in vivo.(Kageyama S, Kurokawa M, Shiraki K.)Antivir Chem Chemother 2000 Mar;11(2):157-164

夏枯草のエキスはエイズウイルス(HIV)の逆転写酵素を阻害してHIVの増殖を阻害する。
その活性成分は腸管から吸収される。(夏枯草の経口摂取がHIV感染症の治療に効く可能性を示唆)

抗腫瘍効果が指摘されている。

The cytotoxic principles of Prunella vulgaris, Psychotria serpens, and Hyptis capitata: ursolic acid and related derivatives.Planta Med. 1988 Aug;54(4):308-311.

ursolic acidに殺細胞作用がある。

一覧へ

ホーム漢方のご注文よくあるご質問プライバシーポリシー銀座東京クリニックアクセスお問い合わせ
Copyright ©2007 オーダーメイドの漢方がん治療 All Rights Reserved.