大腸がんは早期に手術すれば、ほとんど治ります。しかし、腫瘍が大きかったり、リンパ節転移が見つかった場合には、治癒切除と判断されても、5年以内に40〜50%の率で再発します。
大腸の良性腫瘍である腺腫でも、ポリープ切除をしたあとに、他の場所に新たな腺腫が発生することが多くあります。
このような大腸腺腫や大腸がんの再発を予防するための食事やサプリメントの研究が行われていますが、どのような食事や食品成分が有効なのかはまだ十分に明らかにはなっていません。
たとえば、食物繊維の豊富な食事が再発予防効果があるという報告がある一方、それを否定する研究もあります。穀物や野菜や果物の豊富な食事ががんの予防に有効なことは良く知られていますが、このような食事でも大腸がんや大腸ポリープの再発予防には効果が見られなかったという研究結果もあります。
葉酸、カルシウム、ビタミンDやセレニウムの効果を指摘する報告もありますが、コンセンサスが得られるほど十分な証拠はまだありません。
抗酸化性のビタミン(ビタミンCやEやβカロテン、CoQ10など)が消化器系のがんを予防するという証拠はありません。
アスピリンなどの非ステロイド性抗炎症剤が、大腸がんやポリープの再発予防に有効であるという証拠は多く報告されていますが、副作用の観点から、再発予防の目的で長期に使用することには限界があります。
植物に含まれるフラボノイド、インドール、イソチオシアン酸、グルコシアノレート、レスベラトロール、クルクミン、サポニン、テルペンなど多くの成分が、がんの発生予防や再発予防の観点から効果が検討されています。
フラボノイドには抗がん作用、細胞増殖の抑制、抗変異原性、抗酸化作用などが多くの研究で明らかになっています。動物実験のレベルでは大腸がんをはじめ多くのがんの発生を予防する効果も多く報告されています。
フラボノイドの一種のケルセチンとクルクミンを一緒に摂取すると、家族性大腸腺腫症の患者の腺腫の発生や再発を予防する効果があることが報告されています。
上記に紹介したドイツで行われた臨床試験では、アピゲニンとエピガロカテキンガレートという2種類のフラボノイドの混合物を使って、大腸がんと大腸ポリープの切除後の再発に及ぼす効果を検討しています。
アピゲニンはセロリやパセリなどの野菜やカモミールなどのハーブに含まれるフラボノイドの一種です。エピガロカテキンガレートはお茶に多く含まれるカテキンという種類のフラボノイドです。
その結果、このようなフラボノイドミックスを1日40mg摂取すると、大腸がんや大腸腺腫の再発を防ぐ効果があることが示されました。
1杯のお茶には100mgのカテキンが含まれており、その半分はエピガロカテキンガレートですので、お茶を毎日数杯飲むだけでも大腸がんの再発予防効果が期待できるかもしれません。
漢方薬に使われる生薬はフラボノイドの宝庫です。漢方薬の抗がん作用にもフラボノイドが関与しています。
フラボノイドは苦みの原因になるので、抗がん作用を強化した漢方薬はどうしても苦みが強くなります。
「良薬は口に苦し」と言いますが、苦い漢方薬ほど、フラボノイドが多く含まれて抗がん作用が強いということになるかもしれません。
|